私達が、旅に一区切りをして新たに旅を始めたのは出会ってから二年目の事だった。

賞金稼ぎとしての自由気ままな生活は嫌いじゃないし何より隣にエリスがいるならば、私はそれだけで幸せな気分になれるのだから、それで十分だと思う。

エリスが、ナディと一緒に世界を見てみたい、だなんて可愛いことを言うものだから私は今日も張り切っておんぼろの車を飛ばす。



「最近荒野とか見かけないね、全く」

エリスが冷えた外気を楽しむように窓から手を出しながら、背の低い鬱蒼とした森を眺めて言った。

「ここら辺は、針葉樹林も多いしメキシコみたいに暑くも無いからね。エリス、寒くない?」

ここらでは珍しい一年を通して温暖な土地と聞いていたが、暑さに慣れてしまった私たちにとってここらの温度は少し寒いくらいだった。

「んーん、ほらこうやって・・・」

運転している私の右手を取って、腕を絡めるエリス。

「ね?暖かいでしょ」

私は仕方なく片手運転になってしまったが、エリスの腕の温度が心地よくてそのまま片手で運転を続ける。

そうやっている内に大きな川が見えてくる。

「ね、あれ何ていう川?」

「んー、あれは確か・・・」

脇に置いておいた地図を眺める。大きな川なので直ぐに答えは見つかった。

「セーヌ川ってやつね。へぇ〜あれがセーヌ川かぁ・・・。ってことはこの先にシテ島があるから――あ、有名なパリって街この辺なんだ。エリス、寄ってみる?」

「タコスあるかなぁ?」

「あるわけないって」

苦笑しながらも、私は具体的な目的地を定めて威勢よくアクセルを踏んだ。



パリ郊外には、市内観光客用の駐車場が存在していて私たちもそこに止めた。一時間20ユーロなんてぼったくるので警備員のおっさんと小一時間揉めたが、エリスの呆れたような顔を見て私は直ぐに口論をやめた。

私はもう大人になった、エリスのための貴重な時間が20ユーロで買えると思ったら安い位だ。

「ん〜タコス無いねぇ」

「あはは、わざわざパリにまできてタコス食べたいの?」

「うん、ナディのスカート姿ももっかい見たいし」

「・・・それ本気で言ってるの?」

「?だってナディ可愛いよ?」

エリスの方が可愛いよ、と私は頭の中で考えたが昼間の街のど真ん中でそれを言う勇気は無かった。まぁ、夜にでもたっぷりと囁いてあげよう。

石畳の道路は、エリスにも私にも馴染みが無く芸術のパリはどこも刺激的だった。運河の通りでジェラートを食べながら散策していると、私たちは妙な二人組みにあった。

一見奇妙、には見えない金髪の紅い服の女性と背の低い白いパーカーを着た黒髪の女性であったが音を殺して歩く黒髪の方に違和感を感じた。

「・・・同業者かな?」

「んー?どうしたのナディ」

「もしかしたら、久しぶりに賞金稼ぎが出来るかも、って話よ」

二人組みの後を付いて行ったら、もしかしなくても賞金首を横取りできるかもしれない、何て事を考えながら目線を二人組みに移すと、黒髪の方の腰から少女には似合わない無骨なデザインの銃が微かに見えた。

「あれって、ベレッタM1934よね・・・。また古いエモノ使ってるわねぇ」

「ナディって・・・やっぱり銃マニア?」

「やっぱりって何よ、やっぱりって。それより、付いてくわよ、エリ――す?」

追いかけようと歩き始めた私だが、エリスは私の袖を引っ張りそれを遮る。

「ダメ」

「どうしてさ?」

「今日はナディと一緒に遊ぶ日なの。仕事はまた今度」

上目遣いでエリスは言う。可愛すぎて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、今は街中・・・、と恨めがましく心の中でそんなことを唱えながら私は言う。

「お金ないと、ご飯食べれないでしょうが」

「いいの」

「お金ないと次の街に行くガソリンだって」

「いいの」

頑なにエリスは拒む、こうなるとエリスは絶対に折れないのでしょうがなく私が折れる。

「どうしたの?急に」

「だって・・・久しぶりのふかふかのベッドだから・・・」

と顔を赤らめるエリス。私はエリスのサインに気付きながら、興奮を抑えつつエリスの手を引いた。

「そうね、今日はデートするとしますか」

ニヤリ、とエリスが悪戯っぽく笑ったのをナディは気付かないでいるのだった・・・。


某大型掲示板に投稿したss。久しぶりのナディエリはやはりいいな
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